「その手はどんな手?」

以前はグローブを装着せずに診療する歯科医が大勢いたそうです。現在では教育によって感染防止の概念が広がり、ほとんどの歯科医がグローブを装着していると思います。しかし、グローブを装着してさえいればそれでいいかと言うと、そうでは有りません。前の患者さんの治療にあたったあと、そのままグローブを交換せずに次の患者さんを治療する歯科医はいまだに多いと思われます。

グローブを替えても替えなくても患者さんにはそれがわかりません。多忙のため、または費用を抑えるため、なかなか替えない歯科医もいます。1日に1組しかグローブを使わないという先生に出会ったこともあります。

診療を受ける際に担当の歯科医が新品のグローブを装着している音がするか、注意を払ってみて下さい。ゴムのグローブを着脱するとシュルシュル、パチンパチン、といった音がします。全く音を立てないで前の患者さんから次の患者さんへ間髪入れずに移動している先生はグローブをおそらく交換していません。

交換せずとも、「正しい」手洗いをすれば良いのですが、それには数分間の時間がかかります。診療の合間、1日に20回、30回と正しい手洗いを徹底することは大変困難であるので、個々人の手洗いの仕方に頼らず、前の患者さんの診療が終わったら必ず新しいグローブに交換するべきであると考えています。

当院では歯科医のみならず、全てのスタッフが患者さん毎に必ずグローブを交換しています。患者さん毎に交換するのみならず、同じ患者さんでも2回、3回と交換しています。患者さんのお口の中を触った器具に触れた手で他の器具を触らないよう、徹底しているからです。新しく入ったスタッフには「その手はどんな手?」という質問が何度も何度もされます。スタッフが正しい衛生の概念を習得するまで、徹底的に指導しています。